受験失敗53歳で大学へ

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「受験に失敗し、53歳で大学へ入学」

園芸用散水ノズルで日本一

株式会社タカギ 代表取締役 高城寿雄

 

母子家庭→貧乏→受験失敗→職業訓練校→無線会社→脱サラ→倒産を経て

 

(株)タカギは園芸用散水ノズルでシェア60%を持つ日本一のメーカー。他にも浄水器や灯油ポンプなど、プラスチック射出技術を生かし、様々な家庭用・園芸用製品を開発。レジャー分野では’96年に開発したペットボトルロケットの製作キットが日本中でブームに。特許・実用新案を約200保有する開発型メーカーとして、年商はグループで約60億円。

 

■国内シェア60%の特許商品

 

園芸などで欠かせない散水ノズル。タカギの「ノズルファイブ」は、ワンタッチでシャワー・直水・ジョロ・キリ状など5通りに水の出方が切り替わる。最近では類似品もあるが、この散水ノズルは国内シェア60%を占めるタカギの特許商品である。

他には散水や洗車用のホースリール、光センサーとICで灯油があふれない乾電池式の灯油ポンプ、殺菌率100%の高機能浄水器など、園芸用・家庭用のアイデア商品を数多く開発している。

浄水器「みず工房」は殺菌セラミックという特殊技術を採用し、従来問題だったカートリッジ内部の雑菌繁殖も防ぐ特許商品。「西日本暮らしの発明工夫展」で最高の九州通算局賞を授賞し、全国公団住宅の共同購入指定商品にもなった。

「リュックタンク」は阪神大震災後に開発した緊急・携帯用に水を確保できるタンク。リュックのように背負えるもので「ジャパンDIYショー’95」で通算大臣賞を授賞した。’96年には水と空気の力で飛ばす「ペットボトルロケット製作キット」が大ヒット。日本中でブームとなったが、これは入社2年目の女子社員が中心になって開発したという。

このようにタカギは園芸・家庭用のアイデア商品を次々に開発。近年のエコロジー・ガーデニングブームもあり、この不況下でも増収増益を続けている。

調査会社の東京商工リサーチが毎年発表する「九州沖縄の増収増益会社」でも”元気な会社”として何度も取り上げられた。特許や実用新案も約200と、会社の規模にしては数多く保有する。このパワーの源は、やはり代表者の高城に負うところが多い。

 

■悪ガキのイタズラで発明を連発

 

高城は3歳の時に父を戦争で亡くし、家庭は決して裕福ではなかった。小学生の頃から様々な工夫やアイデアを凝らしたいたずらを連発。中学時代にはそれが発明心に転じ、七輪の火を効果的に燃やす「集風器」や薪を効率的に運ぶソリなどを発案。市や福岡県の発明展で特選や優秀賞を次々に授賞した。また、ある時はグラム計算した火薬を使用した本格的な空気銃も製造。犬や猫を相手に試し打ちするなど、相変わらずいたずらは盛んだった。

高校は進学校の門司高校だったが、予備校化していた校風が合わず様々な問題を起こす。そして、なんと無期謹慎処分を2度受けて豊国高校へ転校。しかしそこは自由な校風で、また発明に熱中した。

高校卒業後は予備校にも一時通ったが、神経性胃潰瘍の入院で進学を断念。その後の3年間はアルバイトでモーターボートを作ったり、オートバイやアクアラングで遊びに夢中になった。

「当時は石原慎太郎の小説”太陽の季節”が流行った頃で、若者は新しい生き方を模索していました。 私は私立大学に行ける金はなかったし、国立に入れるほどの勉強はしてなかった。いわば落ちこぼれですが、皆と同じ人生も歩きたくなかった。そこで、まずは会社をつくってひと儲けし、30歳くらいで大学へ行こうと考えました」。

 

■同い年の大学生に負けたくない

 

同い年の大学生に負けたくない、好きな機械や電気の技術を身につけようと、21歳の時に東京の大井職業訓練所へ入所し、ステレオや白黒テレビの製造や修理を学ぶ。その後、無線製造会社に1年勤務し、23歳の時、北九州で高城精機製作所を個人創業。最初の1年はラジオやテレビの修理をしていた。

その後、プラスチックの容器をつくる金型製作に転じ、大手家電メーカーの部品を手がけるなど、徐々に九州では指折りの金型製作会社になる。しかし、

’73年の新工場完成後にオイルショックで注文が激減。’77年に和議申請し、事実上倒産してしまう。

その後、債権者や金融機関の支援もあり、2年後に新会社(株)タカギで再スタートする。

「今では大企業の倒産も珍しくない時代ですが、いい経験になりましたね。あれを契機に、景気の影響を受けやすい受注産業・下請けから脱皮しよう、自社ブランド商品を作ろうと決心しました。しかも、特許や実用新案も取る。発明のビジネス化だと」。

 

 

■発明のきっかけは社員の声

 

その第1号商品は「タンク付き灯油ポンプ」。当時の暖房は石油ストーブが主であったが、重い灯油缶からストーブへ給油するのはひと仕事だった。「タンク付き灯油ポンプ」はホースの先にノズルを付け、タンクとも直結しているので滴も落ちない、楽に給油できるということで爆発的に売れた。これは大阪の新製品コンクールでも入賞し、独占的な製作・販売できる実用新案を取得した。

続けて’79年、現在の「ノズルファイブ」の原型となる散水ノズルを開発。一つのノズルで直進、シャワー、ジョロ、霧、ストップの5目的に使える画期的な商品だった。以前はジョロ型の散水器とノズルは別々だったが、それを一つにするアイデアで成功した。水道の圧力を利用したもので、このノズルも特許を取得した。

「発明のきっかけは社員の声。水を撒くときは水が強く吹き出る方がいいが、バケツに水を汲んだり車を洗うときには、水が飛び散るので水の出を弱くしたい。しかし、いちいちホースからノズルを取り外して取り替えるのは面倒だと。

そこで単純に、一つのノズルで水の出を切り替えられるようにしようと考えました」。

この散水ノズルは大ヒットし、今では園芸用・家庭用には欠かせない日用品となっている。その後もホースリール、簡易シャワーの他、冒頭に述べたような製品を次々に開発。どれも暮らしに密着し、快適さと便利さを具現化した家庭用品だ。

散水ノズルなどは天候の影響を受けやすく、雨の多い年は売上は横ばいとなるが、’79年以降、20年以上もほぼ増収増益を続けている。今ではアイデアから企画開発、設計、金型製作、成形、組立までのプラスチック一貫体制を確立した。

この基礎は、創業期の金型製作技術にある。金型部門は高城精機製作所として存続し、現在もNTT、トヨタ、松下電器などのレベルの高い金型を製作。この技術力が自社製品の開発にも大いに反映した。

 

■53歳で大学へ入学

 

高城は’91年、53歳の時に立教大学法学部へ入学した。20歳頃に思った”会社をつくって一段落したら30歳くらいで大学へ行こう”という夢を実現するためだ。経営は順調で、今さら大学で学ぶものはないのではという声に「経営者は絶えず学ばなければならない。学ばなければ若い人がついてこないし、人材も育たない。そんな会社は繁栄しないという思いが強かった」という。

結局4年間ほとんど大学は休まず、社業は電話とFAXのリモート経営で済ませた。それでも4年で会社の売上は2倍になり、新聞には九州の元気な会社ベスト3に選ばれるなど、地元ではかなりの話題になった。

その間の話は’97年末に「53歳にして夢は実現する」(発行元:経済界)として出版され、ビジネス書のベストセラーにもなっている。

 

■百見は一触にしかず

 

水まわり関連で強い商品を持つとはいえ、社長不在で売上倍増とは残った社員を誉めねばなるまい。

経営者の最大の仕事は人材育成といわれるが、どのように社員教育をしているのか。

「一人前になるためには、もともとの素質、それから指導者がいいことと、それから努力すること。  だから素質のある社員には言ってるんです。やりたかったら何でもやれと。私は指導者として自信がある。倒産も経験したし、発明も数々やってきたし、若い頃は鑑別所にも入れられたことがある(笑)。  高校時代は精神異常と言われとったし、悪いことばかりやって2度も無期謹慎処分を受けた。デートも許されんかった時代に初体験も済ました(笑)。

大抵のことは経験しているから、何でも教えるし、チャンスも与えますよ」。

「理系・文系に限らず、うちのような仕事はアイデアや開発力が大事。しかし、今の学校教育は、絵に書いた餅のことばかり教え取る。初体験と同じように、それじゃあ餅肌の良さはわからないと(笑)。  社員にも常々”百聞は一見にしかず。しかし、見るだけでは駄目だ。百見は一触にしかず。触ってみたらどうか”と言ってます。他社の工場見学に行ったり、他社の製品に実際に触ったり、行きたいところがあればどんどん行って経験してこいと。

大企業では自分が部品の一つになってしまい、自分が何をやっているかわからないケースがたくさんあるでしょう。

うちは水関連で伸びてきた。流体ですね。空気も流体ですから、例えば空気清浄器なども考えています。それから園芸用の商品として有機肥料も扱ってますから、自然農法の分野もやりたい。生活を豊かにし、一般消費者に喜んでもらえる園芸・家庭用のアイデア商品の開発。それがタカギの使命です」。

母子家庭の貧しい家庭に育ち、そのコンプレックスからか様々ないたずらを連発。その延長に様々な発明をしたが、高校も謹慎処分で転校せざるを得ず、その後はフリーターを経て職業訓練校へ。

当然、その学歴では大企業への就職は出来ず、入っても出世はなかっただろう。しかし、その結果、自ら起業することとなり、その後も和議=倒産がきっかけで、自社発明品への道を歩み出す。

人生には無駄はないのだ。

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