何をやるか?天職は?

第2章

 

成功する天職・ビジネスの選び方 ~弱者の商品戦略~

◎あなたの「天職」はなんですか?

 

まずは「なにを」やるのか?

独立した場合、または事業転換を考える場合、扱う商品、工事、サービスを決めないといけません。

 

つまり、あなたの天職はなにかということです。天職とまではいえなくても、あなたがなにをして食っていくか。これを最初に決めなくてはいけません。

 

でも、これを決めるのは結構、難しいですね(上図を参照)。

 

いきなり、「あなたの天職はなんですか?」と聞かれても、まともに答えられる人は少ないでしょう。学生はもちろん社会人も、すでに起業している人も、いまの仕事を最初から「これがおれの天職だ!」とわかってやっている人はあまりいないでしょう。

 

かりに、会社を辞めて独立して、新しい事業を始めるとしましょう。

 

その場合、前の仕事はなにを、何年やっていたのか。前の職業でどれが一番好きか、どんな商品、お客さんが好きか。そういったことを自分自身で考えて一番好きで、うまくいったもので独立すると、当然ですが成功率は高まります。

 

以前扱ったことのある商品と類似している商品でお客も一緒なら、説明もラクに上手にできる。その商品、お客のことが好きだったら、なおいいですね。

「商品もお客も同じ。なおかつ、それが好き」。というのが一番成功率が高くなります。

 

商品は異なるけど、お客は同じ。これが2番に成功率が高い。

一番難しいのは、商品もお客も異なる脱サラや新規事業。これはいきなりやると大失敗します。

 

ポイント! 商品選びと難易度は以下のようになる。自分が過去になにをして成功したか、あるいは好きだったかを、まず考えよう。

 

①「商品」と「お客」が同じ→成功率高し

②「商品」はちがうが「お客」が同じ→2番目に成功率高し

③「商品」は同じで「お客」がちがう→かなり難しい

④「商品」と「お客」がちがう→いきなりやると大失敗率高し

 

※ドラッカーは「好きな事より得意なこと。やりたいことよりやれること。好きで自由気ままより、まずは貢献を責任を果たすべき」と言っています。さすがですね。つい好きでやりたいことをやりますが、それで食えれば、勝てればいいですが、好きでも勝てない食えないでは仕事にならない。趣味は好きでやればいいですが、仕事はライバルに勝たねばならない。そうでないと、お客からお金をもらえない。お金をいただく仕事の場合、自分の好き好きは後に回し、まずはお客の役に立つかどうか。ライバルよりも。その仕事が好きでもライバルより劣っていれば、お客からは選ばれず、結果としてお金はもらえません。そこが、趣味と仕事の違いですね。もちろん、好きでライバルより優り、結果としてお客からもお金をもらえるのが理想ですね。

 

ここに3つの輪。好き・できる・お金になる。=天職・労働・趣味・夢

 

 

 

商品戦略失敗例――鉄鋼メーカーの場合

 

以前、「新日鐵」が通信販売をやって大失敗したことがありました。

新日鐵の売りモノは素材です。完成品ではありませんね。鉄という素材。しかもお客は男の縦社会。まず三菱商事などの商社に売り、それから各地の一次問屋↓二次問屋↓販売店↓エンドユーザーへと流れていきます。

 

ところが通販はお客の95%が女性。まるでちがいます。電話のとり方からちがう。

商品がちがえばお客もちがう。

 

それから新日鐵はパソコンショップをオープンしたことがありましたが、こちらも大失敗でした。新日鐵従業員の平均年齢は41・5歳。でも、パソコンはどちらかというと若い人のほうが得意ですよね。たとえば、大手パソコンショップ・ソフマップの従業員平均年齢は29・7歳。オジサンから見ると、若い客は宇宙人。合わないですね。

 

前述のポイントの①↓②↓③と順番にいけば腕が上がるんですよ。これがいきなり④だと大失敗ですね。

新たに独立する人も、これから事業転換あるいは拡大する人も、このあたりをふまえないと、大変なことになります。

 

◎セットで決めよう「中心」と「幅」

 

「なに」でナンバー1になるかを決めるとき、注意しなくてはいけないことがあります。それは、中心となるものとその範囲、この2つをワンセットで決めなくてはいけないということです。

中心と幅といってもいいですね。

 

これを決めておかないと、つい、思いつきで広げて痛い目にあうことになります。「目標」がきちんと設定されていなければ、「この商品がいい」「この市場がいい」との声や情報に心が揺らいで、結果的に失敗してしまう可能性が高まってしまうのです。

 

わたしは経営戦略教材をつくってますが、内容は100人以下の会社の経営戦略と決めています。お客は中小企業の社長です。

 

大企業の新入社員教育とか、以前は研修講師にもいってましたが、いまは絶対にいきません。いろいろやったけど、もう中小企業以外はやりません。

 

ポイント! 「目標」を決めるときは、「中心」と「幅」も合わせて決めよう

 

商品戦略失敗例――小売大企業の場合

仏壇の「はせがわ」が以前、アジア各国でホテルやマンションなどの新規事業をやり、大失敗したことがありました。

仏壇屋がマンションとどういう関係がありますか? それも外国で。

 

商品の幅を決めないと、「儲かります」という言葉に動かされて失敗します。

 

幸い、はせがわは、近年に始めた墓石事業は大ヒットして、この数年は過去最高の業績を更新しています。仏壇と墓石はセットですから、関係が深い。お客も一緒ですね。

 

はせがわも、痛い目にあって学習したんですね。

 

◎評論家のいうことを信じてはいけない

 

「商品の市場規模が大きければ儲かる」。

一般的にこう考える人は多いですね。多くの経営コンサルタントやマスコミも、こういったことをいいます。

市場規模が大きければ大きいほど、お客の数も多い。たしかにそうかもしれませんが、お客の数に比例して競争相手の数が多いことを忘れていませんか?

 

もしも、あなたの会社が抜群の競争力をもつ強者ならば、「商品の市場規模が大きければ儲かる」というセオリーは通用するかもしれません。

でも、あなたの会社は抜群の競争力をもつ強者ですか?

 

「この市場は5年後には8000億円に!」

毎年、正月や4月になると、評論家というのがでてきて、こんなことをいいますね。フランチャイズの説明会でも、必ずいわれることです。

 

そして、その話を鵜呑みにして話題の市場に参戦し、潰れてしまう小さな会社があとをたちません。競争力、あるいは力のない小さな会社が、これから伸びる市場に手をだしてはいけないんです。

 

これから伸びる、とみんなが思っていて、実際伸びてしまう市場には、あとから必ず強い競争相手が入ってきます。学歴も人柄も人格もよくて、お金ももっているような人がでてくるんです。こういう人には勝てません。すぐにシェアをとられてしまいます。

 

経営は、大きな市場あるいは、これから伸びる市場でビリになるのが一番よくありません。2500年前、中国の孫子が「賢い将軍は、まず戦わずして勝つことを考え、次に勝ちやすきに勝つことを考える」と言っているように、経営規模が小さい会社が成功するためには強い競争相手がいない、市場規模が小さいところでやるべきなんです。

 

ポイント! あなたは、「これから伸びる商品」に手をだしてはいけない。

 

商品戦略成功例その①――移動型飲食業の場合

同業はこわい人たちで、宝の山をあてた「たこ焼き」

 

大企業はおろか、中小企業や普通の人もやらないビジネスでスタートし、いまや年商30億で経常利益4億円の会社があります。日本で初めて冷凍たこ焼きを開発した福岡の「八ちゃん堂」です。

 

この川邊社長は、元は車販売会社の営業課長。彼の父親が社長であり筆頭大株主だったので、そのままいくと2代目社長の椅子が約束されていました。

ところが、車社会はメーカーの支配下にあって自由がない。オヤジの跡を継ぐのもどうも面白くない。なにか自分でやりたいという、脱サラの夢があったんです。

 

最初は会社の遊休地を利用した新規事業を考えましたが、ことごとく親父は反対。ついには意見が対立して「事業というものは一人でやるものだ。そんなにやりたいならでていけ!」と勘当されました。

 

そのとき、川邊さんは36歳でしたが、貯金はわずか17万円。それでやれるものはと考えたあげく、頭に浮かんだのが「たこ焼きの移動販売」でした。

なぜか。

 

以前、川邊さんが車の営業マンをやっていたとき、「たこ焼きの移動販売をするのでバンを売ってほしい。でも、金がないので支払いは分割にしてほしい」という客がきたんです。ビジネスに興味があった川邊さんは、回収がてら、その人の商売を観察することにしました。

 

すると、わずか2カ月で月商は100万円を超えました。その後も2台目、3台目と買い足し、月商は1年もたたずに500万円を突破。

 

たこ焼きは原価が安いからボロ儲けです。ただ、この人は調子に乗りすぎたことが原因で、1年後には生活が乱れて廃業したそうです。

 

貯金はわずか17万円。親友から借りたお金が200万円。お金もなく脱サラせざるをえなくなった川邊さんは、このときのたこ焼きを思いだし、中古17万円のバンを買って「たこ焼き移動販売」に乗りだしました。周囲や親からは「大学まで出た跡とり息子がたこ焼き屋なんて」と大反対されたそうですが、いけるという自信はあったそうです。

 

同業他社は汚い車に接客もなにもない。あいさつもしないし、たこ焼きも新聞紙に包んでだしている。だから、川邉さんはきれいな制服制帽をキチンと身につけ、接客もあいさつもしっかりしました。

 

それと、第一号店のときから、車には“全国フランチャイズ本部・八ちゃん堂”と入れていたのです。

 

最初はマイクで「たこ焼きだよー」と叫ぶのも恥ずかしかったそうですが、開業3カ月目にはブレイク。すぐに嫁さんにも車を出させ、1年後には5台体制に。初年度の納税額は約800万円にもなったそうです。

 

これはほんとうにいける、と確信したのは同業他社に脅されたとき。その筋の人から「場所代を払え、さもなくば廃業しろ」と執拗に攻められました。おれたちの商売を荒らすなと。

 

そのときに、この商売は儲かるが、これでは大企業やエリートは絶対にでてこれないと思ったそうです。ひょんなことでこの業界に入ったものの、もしかしたら業界では最高学歴かもしれない。しかも、車業界でマーケティングや販売術も身につけている。これは大変な宝の山を掘りあてたと確信しました。

 

その後は、移動販売から郊外の一坪ショップへと業態を変え、一時は150店ものFCチェーン組織を構築。現在は「たこ焼きとナスの冷凍食品メーカー」で業界トップクラスとなりました。

 

◎目指せ!小さなナンバーワン

 

「鶏口となるも牛後となるなかれ」。

 

大きな牛の尻になるくらいならば、小さな鶏のくちばしになりましょう。

つまり、大きな市場でビリになるよりも、小さな市場で1位になりましょうということです。

 

これは2500年前の中国の古典「戦国策」にある言葉です。2500年前から価値観が変わってないのです。

 

「なにかでナンバー1になることを目指す」。

 

これが、小さい会社の経営が安定し、成功する最短の道です。

 

別に日本一とか業界一とか、県でナンバー1でなくてもいい。あなたの町の特定の客層や年代で、もしくは、あなたの友人知人のなかでも、小さな年商でもいいからナンバー1になれるものを探すことです。

 

試行錯誤をしていくうちに偶然、強いモノがでてくるということもあります。自然発生的に。でも、こういうのは宝くじがあたったようなもので、長続きは難しいものです。経営として成功するには意図的にやらなくてはいけません。意図的になにで勝負するかを決めて、それに力を入れましょう。

 

なにで勝負するかを決める。どこでナンバー1になるかを決める。これが「目標」になるのです。

 

目標が決まると、いままで気がつかなかった情報が入ってくるようになります。

 

紙を筒状に丸めて耳に付けると音がしますね。このなかに音のノイズが入り、この筒に入った音に共鳴現象が起こり、強調されて強い音になりますね。

これと同じように、なにで勝負するか、どこでナンバー1になるかを決めると、決めたことに対する情報が共鳴現象を起こして、たくさん入ってくるんです。街を歩いていても気がつくようになるんです。

 

全然ちがった商品からもヒントが浮かぶ。モノはちがうけど、これは応用できるなと。

 

経営は競争です。ボランティアじゃない。小さな自分でも勝てるモノはなにか?成りゆきではなく、まずはこの自分の商品=天職を「意識して決める」ことが大事です。

 

ポイント! あなたは「なに」を「どこ」で売って「ナンバー1になるか」を「意識」して決めましょう。

 

商品戦略成功例その②――宅配飲食業の場合

 

「宅配寿司」はいまや全国主要都市では定着しつつあるビジネスですが、大企業がやらない商品です。福岡に7年で約40店舗を展開して年商20億円を売り上げる「ふく鮨本舗の三太郎」という会社があります。

 

この蔀社長はマクドナルドの店長を10年間経験したあと、コンサルタントに転身しました。しかし、研修講師をやっていたときに過労で倒れ、商売転換を考えます。

 

飲食業に的を絞り、ラーメン、カレー、うどんと考えましたが、ラーメン、カレー、うどんともに強敵がいて断念し、最後に残ったのが寿司でした。

 

寿司は日本人の国民食だけれども、職人の世界で近代化が遅れている。値段も高い。しかも出前を頼んでも遅い。サービスも接客も遅れている。この業界なら勝てると。

 

しかし、カウンターを構えた寿司屋は内外装に金もかかるし、職人の採用・育成に時間もかかる。宅配寿司なら設備投資に金もかからず、寿司ロボットを使えば素人でもできる。

 

職人の高級寿司には味で負けるが、寿司を気軽に安く食べたい層はいるはずだと、7年前に福岡で第1号店を出しました。

 

「寿司の作り方も知らず、百貨店から買ってきた寿司を分解して試行錯誤した」レベルでしたが、競合他社は「値段も高くて電話応対もいい加減。配達も遅い」町の寿司屋。最初から月商400万円を突破し、2年目には一気に4店舗も出店しました。

 

明朗会計のチラシに、マクドナルド仕込みの電話応対と接客、注文をもらって30分以内に確実に届けるという「近代化が進んだ業界なら当たり前のこと」をやっただけですが、当時は福岡に宅配寿司専門店はほかにはありませんでした。

 

7年たった現在、福岡では宅配寿司市場の約5割を押さえる、小さな市場のトップ企業になりました。

 

◎大企業がバカにする業種・商品

 

「なに」を「どこ」で売って「ナンバー1」になるかを「意識」して、「中心」と「幅」も決める。

 

以上が、商品戦略を考えるうえでの「目標」になります。

 

では、つぎに、「目標」を決めるさいに、ヒントとなる業種・商品を紹介していきましょう。

 

まずは、「大企業がバカにする業種・商品」。

 

有名大学を卒業し、大企業に入社すれば、喜ぶ親御さんは多いでしょう。ですが、大企業のヒラ社員と中小企業の部長ではどちらがいいですか?

独立して起業したあなたなら、答えは明確でしょう。

 

商品戦略も同じです。大企業がバカにして参入していない業種・商品がチャンスなのです。いくら経営効率が悪い大企業でも、資本力は、起業したての小さな会社がかなうものではありません。競争相手にしないほうが賢明です。

 

大企業が扱えない、扱いにくい商品というものは、じつは結構多くあるのです。

 

たとえば、いまや健康食品やダイエットブームですが、怪しい商品や悪徳商法も多いですから、大企業は本気になってはやれません。同じように怪しいと思われてはのれんに傷がつきますから。

 

ほかにも、「大企業がやらない業種・商品」という切り口で探してみると、見つかるものです。

 

ポイント! 大企業経営者でないあなたは、大企業がやれないことを探してやろう。

 

商品戦略成功例その③――カギ小売業の場合

 

★例えばカギは誰でも持ってますが、1本数百円~と小さな商売ですね。小さな市場ですよ。その小さな商品の小売りで日本一のチェーンになったのが「カギの救急車」(本社・福岡)。2002年7月の日経ビジネス調査「全国優良FCチェーンランキング」では、サービス業部門でNO2にも選ばれてます。

 

上野社長は市場調査会社時代に町の金物屋で合い鍵の作業現場を見て、「これからは団地が増えて合い鍵の需要は増える。しかし、こんな商売は大手が絶対に手を出さない」と、実験的に団地内で露天商を開業。商売は当たり、毎年凶悪化する時代の流れにも乗って、今や日本全国に約200店も展開する企業になりましたね。

 

でも、カギは一件当たりの単価も低く、「カギをなくした」とか緊急の要望に応えるには年中無休24時間体制でやらねばならない。まさに場末の修理業で、非常に泥臭い仕事です。

 

だから、未だに大企業は1社も参入してきませんね。小さな市場で細々とした仕事ですからね。有名大学やエリートは絶対にやりたがりません。だから、いいんですね。

 

◎同業が弱い業種は勝ちやすい

 

次なるチャンスは、「同業が弱い業種」。

 

同業者がたくさんいるにはいるけれど、どこも弱い会社ばかり。

同業が何社もいるが、1位といえども市場占有率6%以下の会社ばかり。

 

こういった業界や商品も探せばけっこうあるものです。この場合、営業のやり方や経営のやり方に思い切った革新を加えると、後発の会社でも逆転のチャンスがあります。

 

ファミリーレストランの「ロイヤル」や「すかいらーく」が大きくなったのも、街の食堂が小さかったから。飲食店はたくさんあって同業者はたくさんいるけれど、どこもこれといって強くはない。だから、組織化してうまくいったんです。

 

コンビニエンスストアも同じです。町の食品雑貨店がどこも弱かったからですね。

 

同業者が弱い業種・商品から選ぶ。要は「勝ちやすきに勝つ」。これが一つの鉄則です。

 

ポイント! あなたは、勝ちやすきに勝てばいい。

 

商品戦略成功例その④――石けんメーカーの場合

17年間の赤字の末に日本一の無添加石けんメーカーに

 

むかしは洗濯やシャンプーも石けんでしたが、いまでは合成洗剤があたりまえですね。

合成洗剤のほうが大量に簡単につくれ、大企業にとっては合理的です。

 

「シャボン玉石けん」も、もともとは合成洗剤の卸売業でした。が、2代目社長42歳の時、自分の湿疹がきっかけで、合成洗剤は体に悪いと実感。あえて当時の時代に逆行して無添加の石けんに転向しました。

 

市場は合成洗剤の20分の1に縮小していたのですがね。

 

そして、17年の間、赤字に苦しみましたが、公害や環境意識の高まりと共にこの20年は増収増益。いまや年商60億円の健全黒字経営です。

 

でも、合成洗剤ほぼ100%のライオンや花王等の大手メーカーは、いまさら無添加に切り替えるわけにもいきません。今も無添加石けんの市場は小さいですからね。

 

結果として「シャボン玉石けん」はこの分野で日本一になってます。

 

◎「手作りローテク商品」の見直しと「シンデレラ商品」

 

手がかかりすぎるために大手が扱えない「ローテク商品」は、小さい会社や起業してまもない人は見直す価値があります。

 

たとえば、飲食業はオーナーによって料理も味も店の雰囲気も千差万別です。手作りのローテク料理には、大量生産の大手外食チェーン店もかないません。大手もいるけれど、小さいお店でも存在できるのです。

 

美容院、デザイナー、コピーライター、コンサルタント業なども、みな職人技ですから大量生産もできないし、手作りローテク商品として価値をつくりやすいですね。

 

また、商品が衰退したり、忘れられた商品でも素材を変えたり、つくり方を変えたり、売り方を変えたりすることで新しい命が吹き返すことがあります。

 

アメリカの経営学者ピーター・ドラッカーの命名による「シンデレラ商品」がそうですね。

 

「シンデレラ商品」とは、市場規模は小さくて一定の需要もあるにもかかわらず、業界のなかでは見下げられて嫌われている。改良をくわえたり、商品の種類を増やせばお客から喜ばれて売り上げにつながるのに、だれも手をつけない商品のことをいいます。

 

「シンデレラ商品」は手をかけたり力を入れると、思いもよらぬ売れゆきを示すことがあります。

 

ポイント! 手がかかりすぎる「手作りローテク商品」。

      みんなから嫌われて放置されている「シンデレラ商品」は狙い目!

 

 

商品戦略成功例その⑤――洋服リフォームサービスの場合

 

福岡にある「リフォーム三光サービス」は、元々は紳士服テーラーでしたが、事業拡大に失敗して倒産しました。創業者の宮崎会長は7年間のサラリーマン生活を経て、再度、「お直し屋さん」として起業します。

 

服のすそ上げやサイズ合わせ・継ぎ接ぎ、つまり服のリフォーム業は一定の需要はあるのですが、単価も1件あたり数百円からという小さな市場。派手なアパレル業界のなかでは「都落ち」といわれる仕事で、大企業はまったく手をださない分野です。

 

アパレル業界の「シンデレラ商品」だったわけですね。

 

業界内では見下げられた分野ですが、服を買ったら、特にズボンのすそ上げなどは必ず発生する仕事です。宮崎会長が近所の洋服店や紳士服チェーンなどへ飛び込み営業すると、面白いように仕事がもらえ、いまでは九州で約40店舗を展開。年商も約4億円で利益もしっかりです。※当初はチェーン店の下請け。現在は自社直営店が中心。

 

◎用途を限定したOO専用商品  見直し。削除?

 

「うちはなんでもやります」。

このスタンスが一番よくありません。

 

小さな会社でなんでもやりますは、お客から見ると、なにを得意とする会社なのかがわかりません。だから、お客を見つけるのも難しい。対象が不特定では、だれに売ったらいいかわかりません。

 

でも、「うちはOO専用」とすると売り先が見つかるんです。ありますよね、「小さい靴専門店」とか「大きい靴専門店」とか。それらは、しっかりと固定客を確保していますね。

 

この前、面白い人材派遣会社を見つけました。「夜間専門の人材派遣」。最高と思いましたね。夜11時から朝6時までの勤務時間が専門の人材派遣です。大企業はみな、深夜手当をだすから給料が高くなる。しかも管理が大変。深夜は管理者もいないといけないですからね。

 

昼間の普通の派遣会社は同業が山ほどいますが、夜専門は敵が少ない。24時間稼働の工場とか、深夜労働のシフトに困っている会社は、少ないけどあるんですね。

 

最初は人が集まるか不安だったそうですが、求人すると1回で30人くらい応募があるそうです。それも意外にいい人が、たくさん登録しにくるそうです。いまは、約500人を派遣しています。

 

ポイント! お客の層をむやみに広げすぎると失敗する。

 

OO専用に限定すると、競合が少なくなってお客が見える。

 

◎細分化で新発見!

 

大きな岩石を割るとき、プロの石工は石の筋目を見つけてクサビを打ち込みます。こうすると、頑丈な岩石も意外に簡単に割れます。

 

これは商品戦略でも同じです。外見上、とても小さな会社が付け入るスキはないと思われる商品でも、どこかに必ず筋目があるものです。

 

節目を見つけるには、商品を「価格別」「サイズ別」「用途別」「客層別」など、いろんな角度から小さくわけてみればいいのです。

 

そして、小さくわけた部分を一つ一つ検討していくと、まだだれも気づいていない商品や、競争相手が力を入れていないものを発見することがあります。

 

他人が気づいていない商品を見つけだすには、妥協を許さない厳しさやねばり強さが必要です。そこで現実的には、単に人がいいとか明るいという人よりも、少々変わった性格や執念深い人のほうが成功例が高くなっています。つまり、「奇人」「変人」というタイプの人には、この方法が有効かもしれません。

 

ポイント! 商品を「価格」「サイズ」「用途」「客層」などで細分化してみると、新しい商品のヒントを発見できる。

 

商品戦略成功例その⑥――中古車ディーラーの場合

 

佐賀県の郊外に、「カーライフ550」という中古車販売店があります。

 

ここの池田社長はカバン一つの中古車ブローカーで創業して店を構えたのですが、徐々に競合他社が増えて業績が悪化しました。同じ頃、バクチにはまって1億円もの借金を抱えたんです。

 

悩んだ末に打ちだしたのが「5万円から50万円の中古車専門店」への鞍替え。店名も、それまでの池田商会から、取扱商品を示す店名「カーライフ550」に変えました。

 

100万、200万円の中古車の扱いをやめ、商品を低価格帯の中古車だけに絞ったのです。

 

5万円~50万円の中古車市場なんて小さなものですね。儲けが少ないから、大手のディーラーはやりたがらない。でも、結果としては、そのエリアのお金がない中古車初心者は、必ず「カーライフ550」へいくようになり、年商も2年で倍増。借金も完済し、いまでは、佐賀郊外の初心者向け中古車ディーラーでナンバー1になりました。

 

◎売る側と買う側のズレがチャンスを生む

 

どんな商品でも、最初はあるお客のニーズを満たすためにつくられています。

 

しかし、年月の経過によって、お客の欲求が変化していくので、買う側と商品をつくる側に、商品に対する価値観のズレが生じるようになります。

 

「売る側から見た良い商品と、買う側から見た良い商品はほとんど一致しない」。こういったのはドラッカーです。

 

「アート引越センター」は元々、運送会社の大きな下請け配送をやっていましたが、ある日親元から切られたんですね。それでリストラでトラックを売り払い、最後に屋根付きのアルミバン型の大きな車が一台残った。

 

あるとき、同社社長が夫婦でドライブしているとき、前に日通の引っ越しトラックが走っていた。ところが雨が降りだし、そのトラックは慌ててビニールのシートを荷物にかけた。それが汚かったんですね。でも、当時は引っ越しのトラックは屋根なしがあたりまえだったんです。

 

それを見て、「そうだ、このトラックなら雨に濡れないし、喜ばれるぞ」と、物流運送から引っ越し屋に転業。早速、その屋根付きトラックの写真を電話帳に載せたところ、仕事がたくさん舞い込んできた。やっぱり、狙いはあたったと。

 

ところがお客の主婦に聞くと、「あれは近所に荷物が見えないからいいのよ。恥ずかしいからね」と。家のなかには他人に見られたらイヤなものがたくさんあるでしょう。古いものでも捨てられないとか。隠れた趣味のモノとか。

 

雨に濡れないから良いと思っていたことが、お客にしてみれば荷物が見えないから良いんだと。それ以来、社長はこれはお客に聞くしかないと、いろんなニーズ・隠れたウオンツを探すようにしたそうです。

 

売る側と買う側のズレを探すためには、あなたが、なにか商品やサービスを買ったときに、その商品のアラを探すようにしてはいかがでしょう? また、お客から苦情をいわれたら、それは改良のチャンスです。

 

ポイント! 売り手と買い手のズレはチャンスを生む。チャンスを生かすためには、消費者の視点を大事にしよう。

 

◎古い業界のやり方を変える

 

商品によって、訪問してお客を見つけるか、お店を構えてお客にきてもらうか、営業の形態がちがいます。資金・儲け・営業形態が、どの商品を選ぶかで決まるといってもいいでしょう。

 

そのなかで、業界の常識といわれるやり方を変えることで成功することもあります。革新ですね。いままでの常識にとらわれないようにやっていくことが必要です。

 

業界で信じられている常識や制約事項をどうやって破るか。こう考えて実行した人は新しい事業の成功者になります。業界ではだれも疑わなかった常識を覆すこと。

 

古い業界に学校を卒業して20年も30年もいると、「我々業界は特殊だ」といい始めるんですね。でも、「ちがうやり方はあるはずだ」と思える人は殻を破ってでる。これはその人の性格にもよります。

 

社内で意見がちがう人は、追いだされることがありますね。でもそういう人を追いだした会社はダメになっていきますね。

 

変わった考えをする人を追いだすと、社内でいつも同じ考えしかできなくなってしまいます。会議を100回開いたって、「みんなウチは特殊ですもんね」という。特殊だろうがなんだろうが、資金繰りが悪くなったらつぶれるんです。

 

業界の古い慣習をどう破るか。ここにチャンスがありますね。

 

ポイント! いままであたりまえだと思われていた常識を破る。

それだけでも新しいチャンスが広がる。

 

商品戦略成功例その⑦――陶器メーカーの場合

 

陶器メーカーは代金の回収が半年以上と長い業界です。メーカーが、まず地元の卸しに売り、それから遠い消費地の焼き物卸しに売る。そして現地の小売店に売って最終のお客に売る。だから、少しずつしわ寄せがたまって回収が遅くなるんです。これは陶器メーカー業界では常識とされていました。

 

ところが、佐賀の陶器商社「アリタ」の久保田社長は流通をカットして、全国のデパートで陶器の展示即売会を開催し、その場でエンドユーザーから現金回収をしています。その一方で、メーカーへの支払いには余裕がありますから、売り上げが上がっても資金繰りには心配がないのです。中小零細企業の経営者の一番の悩みは資金繰りです。この悩みが解消しただけでも、社長は本来やるべきことに力を入れることができ、より安定するのです。

 

一見、簡単なことですが、古い業界では革新的なことだったんですね。

 

◎やってはいけない2つのこと

 

経営力のない小さな会社はやってはいけないことが、いろいろあります。まずは、商品の数を増やしてはいけません。

 

商品の数が多いと、売るチャンスが増えて、売り上げも利益も上がるような気がしますね。でも、結局は力が分散してどの商品も弱くなり、負け組商品ばかりになる。売れない商品をたくさんかかえても経営を圧迫するだけで意味はありません。

 

なんでも扱うのは強者の戦略。弱者は扱う商品を少なくし、業種の幅も狭くしなくてはいけません。あれもこれもやらない。一つに絞りましょう。これが大事です。

 

つぎは、非関連多角化は命とりとなるので、絶対にしてはいけません。

 

商品の数と同じく、事業の数を増やしておけば会社の経営が安定すると考えがちです。この事業がダメなときは別の事業で稼ぎ、それもダメならさらに別な事業でという考え方でしょう。しかも、手広く事業展開している会社は、積極的で熱心にも見えます。

 

しかし、わたしが企業調査会社勤務時に倒産した会社を1600件を調査した経験でいうと、本業とまったく関係のない事業に手を広げすぎている会社の業績はどこも悪く、倒産率も非常に高くなっていました。

 

ある建設会社の例ですが、そこは従業員が15人しかいないのに、名刺には「木造住宅建設・ビル建設・増改築・健康機器・健康食品・レストラン」と書かれていました。こういう名刺や看板を見ると、いかにも積極的に見えます。しかし、その2年後、その会社は業績が悪くなり、倒産しました。

 

小さな会社が商品を増やし多角化すると、なぜ危ないのか。

 

それは、扱う商品によって客層が変われば、売り方もまったく変わってくるからです。

 

木造住宅を建てるのはサラリーマンが中心で、商業ビルは経営者や地主がお客。健康機器や健康食品のお客は女性が中心になります。

 

商品が変われば客層が変わり、客層が変われば売り方も変わりますから、それぞれの客層に支持されるような営業のやり方に変えていかないと、多角化は成功しないのです。

 

異業種での営業経験がある人はわかるでしょうが、ルートセールと新規開拓、法人相手と個人相手、男性客と女性客では、どれも営業方法や営業トークがまったくちがいます。このすべてができるスーパーセールスマンは滅多にいません。

 

「中小企業と屏風は広げると倒れる」という格言があります。大企業でも、多くの会社は多角化に失敗しています。

 

経営力のない小さな会社は、エンドユーザーから見て、まったく関連のない複数の事業に手をだすのだけは、絶対に避けるべきです。

 

ポイント! 「広げすぎ」は命とり。商品も業種も1つに絞って力を入れよう。

 

商品戦略成功例その⑧――住宅リフォーム業の場合

 

福岡で1998年に創業し、現在年商25億を上げる住宅リフォームの「ホームテック」という会社があります。小笠原社長は元都市銀行の営業マンだったのですが、銀行の将来性に悲観して退職しました。

 

その後、一定の市場はあるが大企業が本気で出てこない、規制がない、同業他社が零細、という理由で、住宅のリフォーム業界に転身しました。

 

住宅リフォームは現在でも7兆円市場と言われる業界ですが、新築住宅に比べると工事単価は一ケタも二ケタも低く、大量生産できない分野なので、大企業は本気で参入しません。ゼネコンやハウスメーカーにとっては「今は不況だから、リフォームでもやるか」という「でもしか産業」なのです。

 

住宅リフォームと一口に言っても、キッチン・バス・トイレ・洗面所などの水回り、クロス・ふすま・網戸・ドア交換などの内装、外壁・屋根・ベランダ・庭・カーポートなどの外回りなど、その商品分野は数百にもなります。

 

大企業から見れば「でもしか産業」でも、実際にすべての商品に対応するのは大変です。

 

そこで、ホームテックが絞ったのは「一戸建ての外壁リフォーム」。水回りや内装の場合はわかりませんが、外壁は外から壁の傷み具合やひび割れなどが確認でき、比較的リフォームニーズを探しやすい。かつ、外壁系の同業他社には材料や営業方法が悪徳なものも多く、逆にチャンスだと考えたのです。

 

原材料には大手塗料メーカーの最高級品である「フッ素」を採用。一戸建ての外壁リフォームにのみ営業を絞り、あとで述べる「エリア戦略」と「顧客戦略」も駆使して成長しています。

 

この業界はまだまだイメージは悪く、優秀な人材はなかなか来ません。そういう社員に、数百もあるリフォーム商品の知識をすべて修得させるには5年10年かかります。その点、商品を外壁だけに絞れば社員教育もしやすく、営業もしやすい。何でも屋の同業に比べ、外壁塗料の仕入れ面でも有利になる。

 

小笠原社長は、起業当初から全国展開を考えていたそうです。

 

そのためには、商品も営業も顧客も、対象を一点に絞ることが必要でした。すべてを絞ればシンプルになり、システムにしやすく、拠点展開もしやすい。弱者は大企業がやれないことを、さらに絞ってやることが成功の秘訣だそうです。

 

◎強い商品が見つからなくても大丈夫

 

ここまで考えても、なかなか世の中にない、弱者でも1位になれるという商品を探すのは難しいですね。まあ、みなが発明家やベンチャーではないですからね。

 

でも、安心してください。じつは、経営に占める商品のウエイトは3割しかないんです。つまり、どこにでもある商品でも、営業エリアの決め方や営業方法の差別化で、成功する方法はいくらでもあります。

 

これからの章を楽しみにしてください。

 

ポイント! 商品3分に売り7分。すごい商品が見つからなくてもがっかりするな。

 

商品戦略4大原則と7つのヒント

 

原則その① 「なに」を「どこ」で売って「ナンバー1」になるかを「意識」して決める

原則その② 過去に扱ってうまくいった商品は成功率が高い

原則その② 市場規模の大きな商品、これから伸びる商品には手をださない

原則その④ 商品・業種は1つに絞る

 

ヒント① 大企業がやれない商品

ヒント② 同業が弱い業界

ヒント③ 手間のかかるローテク商品

ヒント④ 嫌われものの商品

ヒント⑤ 〇〇限定商品

ヒント⑥ 細分化=用途や客層や価格別にわけて対象を絞る

ヒント⑦ 売り手と買い手のズレを狙う

ヒント⑧ 業界の悪慣習のスキをつく

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