「洋服の青山」の店舗(「Wikipedia」より)

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「洋服の青山」を展開する青山商事は、働く女性に人気の靴修理店「ミスターミニット」を運営するミニット・アジア・パシフィック(東京・港、非上場)を買収した。投資会社、ユニゾン・キャピタルから全株式を現金で取得した。買収額は100億円を超えるとみられている。

ミスターミニットは靴の手入れや修理、合鍵の作製などが主力。ベルギーが発祥で、1972年8月に日本へ上陸し、98年に日本法人名をミスター・ミニット・ジャパン・リミテッドからミニット・ジャパンに変更した。ミニット・ジャパンの絶頂期は91年。売上高は110億円を超え、営業利益は30億円以上あった。店舗数も最大で614店を数えた。

その後は一気に業績が落ち込んだ。国内店舗数は366店舗まで減少。02年の売上高は50億円前後にまで落ち込んだ。06年、グローバルミニットグループから離脱し、2月にMBO(経営陣による企業買収)によって独立。6月にはカナダ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドのミニットを傘下に収めた。

同年6月、営業地域の拡大に伴って社名をミニット・ジャパンからミニット・アジア・パシフィックに変更した。MBOの資金を出した海外投資ファンドが株式を保有した。従来のミスターミニットは百貨店やスーパー、駅周辺が中心で、働く女性客に圧倒的に支持されてきた。婦人靴はヒールがすり減るからだ。

国内では立地や客層を絞り込んだ店舗を開発した。新タイプの店舗は百貨店に絞り込んだ。デザインもアカ抜けたものに変え、百貨店の顧客が好むような店づくりをした。11年12月、国内投資ファンド御三家のひとつ、ユニゾン・キャピタルがアジア・コンシューマ・ホールディングスB.V.が保有する全株式を取得した。百貨店と大都市の駅周辺に絞り込んだ結果、店舗数は減ったが業績は向上。15年3月期の連結売上高は113億円。2年前より9%増えた(営業損益は非公開)。

店舗数は連結ベースで564店舗(日本294、オーストラリア・ニュージーランド246、シンガポール・マレーシア17、中国7)。従業員は829名(いずれも15年3月末現在)。ユニゾン・キャピタルは、投資してから4年。業績が上向きになったことでミスターミニットを売却。投資した資金を回収することにしたわけだ。

●脱スーツ

紳士服専門店の青山商事は“脱スーツ”を進めている。団塊世代の大量退職などで男性用スーツの市場規模は10年前の7割程度にまで縮小した。15年9月中間期のビジネスウェア事業部門の既存店売り上げは前年同期比5%増。消費増税による駆け込み需要の反動で売り上げが落ち込んだため大幅アップが期待されたが、伸びは微増にとどまった。メンズスーツの販売着数は13年9月期の87万着から15年9月期の78万着へと、およそ1割減少した。

一方、フランチャイズ提携している世界的なジーンズブランド「リーバイス」などのカジュアル事業は、新規出店効果もあり売上高は前年同期比62%増。スーツ需要が落ち込む一方で、カジュアル化が進んでいることを数字が示している。

青山商事は今年、スーツ専業からの脱却に向けて、経営の舵を切った。16年3月期からの3カ年計画には、ジーンズなどのカジュアル衣料品店や焼肉店の拡大を盛り込んだ。連結売上高に占めるスーツ関連以外の事業の比率を15年3月期の20%から26%に高める。

11年には子会社を通じて焼肉店「焼肉きんぐ」のフランチャイズ展開を始めた。12年にはカジュアル衣料品店「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」の出店も始めた。ミスターミニットの買収は、多角化戦略の一環である。

青山商事の16年3月期の連結決算の売上高は前期比7%増の2370億円、純利益は同2%減の125億円の見込み。非スーツ部門の割合は21%と予想している。依然としてビジネスウェア事業が売り上げの8割、営業利益の9割を叩き出す収益構造に変わりはない。

●AOKIは多角化で先行

業界2位のAOKIホールディングスが事業の多角化では先行した。漫画喫茶「快活CLUB」や横浜市のみなとみらい地区に国内最大級の結婚式場を開業するなど脱スーツを進めた。16年3月期の連結売上高は前期比4%増の1910億円、純利益は11%増の113億円の見込み。非スーツ部門は全体の39%に達すると予想。利益で青山商事を激しく追い上げている。

洋服の青山は紳士服業界トップを独走し、スーツの販売数量世界一を誇った。その成功体験ゆえに、スーツ専業からの脱却に苦慮している。
(文=編集部)