ダメ人間は学歴病

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◆ダメ人間は学歴病 (ダイヤモンド・ボツ原稿)

筆者:以前、自営業や中小企業の経営者の最終学歴を調べたことがあるようですね。

栢野:私は、この10数年、「小さな会社の口先評論家・ジャーナリスト」として福岡や全国で、自営業や中小零細企業向けに講演や勉強会を約2000回してきました。

多くの社長と接しながら学歴を調べたのです。彼らから経営の相談を受けたりしたときや、講演やセミナーに招いていただいたとき、本や記事を書くためにお会いし、話をうかがったりしたときなどにヒアリングをしてきました。

最終学歴で最も多いのは、高卒です。その次に、いわゆる三流無名大学。その後に二流大学と続きます。難易度が高い旧帝大や早慶卒は少数派ですね。大企業サラリーマンは高学歴が多いですが、中小零細の独立起業では逆なのです。

私の地元・福岡市では、旧帝大の1つである九州大学(以降、九大)の難易度が圧倒的に高い。九大を卒業すると、多くは大企業や公務員になります。そこで活躍し、ある程度までは出世(昇格)もするから、辞める人は少ない。ましてや、独立し、自営業を開業したり、会社の起業をするなんて、めったに聞きません。
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筆者:ここ10数年は、一定の入学難易度以上の大学を卒業した人が、会社を創業することが増えているように思います。

栢野:IT系ベンチャー企業ではその傾向がありますが、創業・起業の中で大きな流れにはなっていないと思います。

私の地元でも、ごく一部に例外はあります。九大を卒業し、一時期、小さな会社で経験を積み、その後、独立し、会社を興した女性がいます。ぐんぐんと業績を拡大させ、地元では知られた人です。

プライドの高い九大卒は、泥臭い中小企業、独立起業の世界では滅多に成功しません。地場大企業のサラリーマン社長や後継者には九大や早慶が多いですが、創業の叩き上げで「九大卒」は本当に少ない。彼女は稀少人種ですね。

一方で、サラリーマンで成功しやすい九大卒でもうまくいっていない人もいます。私が大企業、中堅企業と転職に失敗して小さな会社に勤務していたとき、九大卒の男性社員がいました。聞いてもいないのに「ボク九大」とひけらかすので、皆でイジメましたねえ。私も一緒になって(笑)。気分良かったですねえ。その会社は大半が高卒や三流大学で、上司もヤンキー上がりの高卒でしたから…。
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筆者:私が取材で見てきた、高卒の「大卒いじめ」もすさまじいものでした。

栢野:私の友人で京大卒が2人いますが、一人は中堅のゼネコンに入社。そこは九大閥で、京大卒というだけで左遷されました。逆差別ですね。もう一人は大手メーカー経て証券会社へ転職しましたが、「飛込み営業させられた」と即退職。その後の中小企業も続かず行方不明。プライド高い学歴人間はダメですねえ。

私も二流学歴のくせにプライド高くてサラリーマン大失敗。7回も転職を繰り返し、行き場が無くなって独立しました。就職できないから社長になる。最近多い、中高年で独立して社長を名乗る人の大半はこのパターンです。
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「ハングリー・パワー」

筆者:ところで、創業経営者で成功するためには、学歴は必要でしょうか?

栢野:自営業であれ、会社であれ、直接的には一切関係ないと思います。成功する人に多くみられるのは、「ハングリー・パワー」でしょうね。これが、もっとも大切です。MBAホルダーであるとか、経営学の本を読みこんだとか、そんなものは独立・起業で成功していくうえで大きなウェートをしめません。

ゼロから会社を興し、本格的な大企業にさせた経営者の中には、子どもの頃にいじめを受けたり、何らかの差別的な扱いを受けたりして、「見返してやる!」というスイッチが入ったと思える人がいます。
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筆者: スイッチ?

栢野:このスイッチが入り、猛烈になると、誰もが勝てませんよ。大成功した経営者の中には立派な学歴の人もいるかもしれませんが、その部分だけを見るのはまさに会社員の発想。その経営者は、自らの学歴のことを何も感じていないと思います。たまたま、その大学・学部を卒業しただけのことでしょう。

そんなことより「見返してやる!」というスイッチが入ったか否か、です。逆にいえば、このスイッチが入らないと、高学歴であろうとも、その意味での成功は難しい。スイッチが入る前に受けた人種や家が貧乏でいじめや差別などは、本人も多くは語らないみたいですが、壮絶なものがあったと聞きます。だからこそ、彼らはすさまじいパワーをもっているのだと思います。
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筆者:たぶん、多くの会社員は、その偉大な経営者の学歴をみては、「俺と同じ大学出身」と喜んでいるのでしょう。実は、別世界の人なのでしょうね。

栢野:あのような経営者は、たまたま、その大学を卒業しただけですよ。出版社などが、毎年、「大学別、上場企業役員数ランキング」などを発表しますね。あれを見て、喜んでいる会社員と似たようなものです。

こんな会社員には、創業や起業なんて無理ですよ。大企業に勤務する、典型的なB級社員でしかない。おそらく、出世で伸び悩み、不満をもっているのでしょうね。

私も、かつてはそのひとりでした…。ゆきづまったときに、「俺が卒業した立命館は二流だが中の上で出世ランキング○位。まだ、俺はいける!」とね。きっと、多くの会社員があれを見て、そんな思いに浸るのでしょうね。出版社は、それが狙いなのだろうけど。

あのランキングを見て喜ぶ人は、社内では、「仕事ができない人」とか、「実はダメな人」とバレているけど、社外ではバレていないと信じ込んでいるのでしょうね。今なお、「さすが!○○大卒!」と見てもらっている、と思いたいのでしょう。実際、そのように見る人がいることも否定しがたい事実です。
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筆者:そのいずれの人も「学歴病」なのかもしれませんね。

栢野:それが、多くの大企業の会社員のホンネだと思います。偏差値が意識にこびりついている以上、仕方がない。変えようがないし、本人も変わろうなんて思っていませんよ。

私は、いくつかの大企業を渡り歩いてきました。上司や同僚には、慶應とか、早稲田、関関同立や明治、立教、青山、学習院、中央などを卒業した人がたくさんいました。大企業は、私立大ではこのあたりがボーダーラインではないでしょうか。

この人たちは、中年になると「大学別役員数ランキング」を見て自分を慰めたり、奮い立たせたリしているタイプが多かったように思います。

私が3社目に勤務したIBMリース子会社では、慶應卒の人が上司でしたが、私の履歴書みて最初の一言が「立命か。珍しい」。関西の採用ラインは同志社と関学まで。「その下のバカな立命でよく入社できたな」という意味でした。つまり、その会社では私が学歴最低。そのプレッシャーに加え、実力もなかったので3年持ちませんでした。数年後、その人事課長がまだ40代前半で亡くなった時は、ざまあみやがれと思いましたね。
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「これ以上、みじめになりたくない」

筆者:「自分が優秀ではない」という現実をなぜ、受け入れないのでしょうかね…。そんなところに未練がましくいるのではなく、中堅・中小企業に移り、そこで活躍して、「見返してやる!」と思わないのでしょうか?彼らは…。

栢野:それは、自営業とか、起業家の発想です。大企業に勤めるほとんどの人は、そんなことを考えていない、と思います。「中小企業で勝負してやる!」ではなく、「これ以上、みじめになりたくない」ぐらいに感じているでしょう。中小企業をバカにしている人もたくさんいるはず。ほとんどの人は、特に40歳以上は出世でゆきづまろうと、バカにされようとも、大企業にしがみつきます。
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筆者:私には、みじめにしか見えませんが…。

栢野:会社にしがみついて、残ろうとする判断は間違ってはいないと私は思います。大企業で、特に人事、広報など管理や事務系の人は退職しても、その後、行き場が少ないでしょうから…。そんな人が、中小企業に転職しても「使い物」にはなりません。

どうしても独立・起業をしたいならば、いったん、中小企業やベンチャー企業に転職をしてみるべきです。そこで思い知るべきですよ。いかに自分が甘い世界にいたか。いかに会社のブランドで生きてきたか、と。私も、大企業から中小企業に転職し、思い知りました。

中小企業に移ったとしても、社長の中には、大企業の高学歴社員=使えないという偏見や逆差別する人が結構いますから、いじめを受けることもあるかもしれませんね。
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筆者:元ヤンキーの上司に、あごで使われるかもしれない。

栢野:大企業とはいえ、業界・業種によっては、大量に「使い捨て人材」として雇っている会社はあります。外食や流通小売りチェーン、証券や住宅など。

私が新卒で入ったヤマハ発動機は新卒の文系が200 人。一部上場でしたから、立命クラスは最低ラインと覚悟してましたが、その大半は三流四流大学で驚きました。そしてその全員が子会社へ出向。現場のライバル企業は全員が高卒で、まさかの使い捨て採用だったんです。

「こんな低学歴の現場はいやだ。早く親会社へ戻って本社スタッフになりたい」。と見下した価値観でやっていたので、その現場ではまったく通用しませんでした。営業成績も最低で、入社半年でノイローゼ退社。学歴病の典型的なダメサラリーマンが私でした(笑)

私は中小やベンチャー企業のほうが、本物の力がつくと自らの経験論をもとに思います。大企業に就職したならば、ある一定の年齢をこえたら、必死にしがみつくしかないですよ。1歩外へ出たときに通用する実力があるとは思えないから。
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家族にも言わずに、ひとりで封印してきたこと

筆者:ところで、ご自身が、学歴に関心をもつようになったのは、「不思議な経験」をしたからのようですね。

栢野:私の父親は昭和ヒトケタで、終戦直後に大学を受験しました。大学進学率は今では想像できないほどに低い。そんな時代に国立の神戸大に進学し、卒業後、地方銀行に入ったのです。30代で取締役になり、その意味ではエリートだったのでしょうね。わが子の教育にも熱心でした。だけど、私は小中学生の頃、優秀ではなかったのです。父は心配したのかな…。不思議なことが私の目の前で起きたのです。
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筆者:不思議なこと?

栢野:高校1年のとき、我が家は引っ越しをしたのですが、その前日、突然、見知らぬ中年の男性が家に現れました。その場にあった段ボール箱の上に数学のプリントを乗せて、「この問題を解いてください。宿題のお手伝いをします」なんて言っていたことを記憶しています。変だなと思いつつ、その問題を解いたのです。男性からは、回答や答えの導き方まで丁寧に教わりました。

その直後、引っ越しに伴い、福岡県立小倉西高校の編入試験を受けたのです。数学の問題は、あの中年の男性がもってきた問題と同じなのです。お陰で、私は高得点で合格しました。入学後、さらに驚くべきことが起きます。数学の授業が始まり、教室に入ってきた教師が、あの中年の男(江上)だったのです。
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筆者:引っ越しの前日に現れ、手ほどきをした、という男性ですね…。

栢野:その通りです。私は、親の力か、何かが働いているかもしれないと思いました。だけど、父にそのことを聞けない。この高校は県立だから、男性教師は公務員でしょう。裏で何かがあったならば、大きな問題になりうるわけですから。父はその1年後に脳いっけつとなり、逝ってしまいました。44歳かな…。結局、真相はわかりません。私は家族にも言わずに、ひとりで封印してきました。この経験を1つのきっかけにして、学歴について考えることが増えたのです。

筆者:学歴には、人間を変えてしまう何かが潜んでいるのかもしれませんね。

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